電子の恋 2019 12 15

「物質は、粒子であり、波でもある」
 ただし、目の前にあるリンゴは、
粒子の性質が大きく、波の性質は小さい。
 しかし、電子のような微粒子になると、
波の性質が大きくなる。

書名 2つの粒子で世界がわかる
   量子力学から見た物質と力
著者 森 弘之  ブルーバックス

 大学生の涼真は、冬なのに額には汗が浮かんでいた。
恋人の亜理紗が待つ駅のモニュメントまでは遠い。
待ち合わせの時間から10分も過ぎている。
 大きな駅の構内は、休日で混雑していて、
まっすぐ進めない。
 近くにはコンサートホールがあるので、
何か大きなイベントが終わったのだろうか。
 右へ左へ避けても、人とぶつかりそうになる。
遠くに亜理紗が時計を確認する姿が見えるが、
駅は大混雑していて、前へ進むことすら、ままならない。
 涼真は、額の汗どころか、
背中にも汗が伝わってくるのを自覚した。
 焦れば焦るほどエネルギーを消耗して、
汗に変換されていくのを感じた。
 それでも思いは届く。
「俺は、ここにいる」と思った瞬間、
亜理紗は、俺に気づき、微笑む。
 そして、心と心がつながった瞬間、
急に道が開けたように見えて、
亜理紗の待つ場所へ引っ張られるように感じた。
 現代物理学を恋愛で説明するのは、無理があるかもしれません。
駅の中の人たちが原子、涼真と亜理紗が電子です。
 電気が金属の中を流れる時は、電気抵抗があり、熱を発します。
金属の中は、原子が規則正しく並んでいるはずですが、
それでも完全に正しく並んでいません。
そのうえ、不純物も入っているでしょう。
さらに、常温では、原子は、振動しています。
 このような状態の中を電子は進むのですから、
まっすぐ進めず、エネルギーを消耗してしまいます。
 しかし、粒子だからこそ、抵抗にあってしまいますが、
波になってしまえば、障害物があっても、問題ありません。
 愛は、人と人を結びつけますが、
涼真と亜理紗も心が通じ合った瞬間、一体化したでしょう。
 たとえ、距離が50m離れていても、
一体化した結果、二人にとって距離はないようなものとなったのです。
二人の関係は、大混雑という障害を乗り越えたのです。




























































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